[高校総体]石川県代表は星稜。王者にあった“奥の手”

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■星稜を土俵際まで追い詰めた金沢学院

 石川県の高校総体予選決勝が3日に行われ、延長後半の82分に決勝ゴールを挙げた星稜が8年連続28回目の総体出場を決めた。

 決勝に駒を進めたのは前回大会の王者・星稜と元群馬の北一真監督が率いる金沢学院。昨年は総体予選、選手権予選ともに無失点と圧倒的な強さを誇った星稜だが、新チームでの新人戦では準決勝で金沢学院にPK戦の末に敗れている。河合伸幸監督が「こんなにチャレンジャーとして戦わなければいけないのは久しぶり」と言うように、上位数校の力は本当にきっ抗していた。

 それを表すかのように、前半から主導権を握ったのは金沢学院だった。前日に延長(35分ハーフ+10分ハーフの計90分)・PK戦まで戦ったこともあり、どこか体が重そうな星稜に対し、金沢学院は2分に奪ったCKからいきなり星稜ゴールを脅かす。運動量の多い両ワイドに前線の選手が絡み、勢いをもって相手を押し込んでいく。そして何よりも際立ったのが球際の強さ。主将のCB上村一太を始めとしたDF陣がロングボールをことごとくはね返し、五分五分やそれ以下のボールにも必死に食らいついた。その清々しいまでに外連味のない姿勢が実ったのが31分。ゴールほぼ正面で得たFKをDFの土橋琉輝が蹴ると、ボールは美しいカーブを描き、GKの手をかすめてネットに突き刺さった。

 後半になってもなかなか主導権を奪い切れなかった星稜だが、王者には奥の手があった。53分にDF奥秋賢将を投入し、それまでCBに入っていた184cmの川口優大をトップに上げた。「本当は使いたくなかった」(河合監督)という策だったが、これがハマった。前線にターゲットができたことで、押し込むことができるようになった星稜は、残り9分となったところで廣島大雅が倒されPKを獲得。これを別宗裕太がしっかりと左隅に蹴り込んで同点に追いついた。

 26℃という気温以上に暑く感じられる炎天下での試合は延長戦に突入。そして延長後半、勝負を決めたのは前線に上がっていた川口だった。

■傷だらけのファイターが決めた決勝点

「理想の選手は鹿島の鈴木優磨選手」
 DFらしくない選手名を挙げた川口だが、中学年代(仙台ジュニアユース)まではずっとFWとしてプレーしてきた。去年もFWとDFの両方でプレーしており、「鈴木優磨選手の戦う姿勢が好き」というファイターだ。その川口がPK戦も見えてきた82分、川本虎太郎のクロスに飛び込み、見事ヘディングで決勝ゴールを奪った。

 今年は副主将を務める川口だが、ここまで決して順風満帆にきたわけではなかった。昨年に右足甲を骨折し、いまも患部にはボルトが入っている。今年も最初はAチームに入れなかった。それでもなんとか間に合わせた今大会は決勝までフル出場。ケガでプレーできないもどかしさも、スタンドから応援する悔しさも知る川口だからこそ、「そういった選手たちにも全国で戦うチャンスをつくるために、俺らがしっかり勝たないといけなかった」。ゴール直後に両足をつって交代になってしまうほど、最後の力を振り絞った渾身のヘディングシュートだった。

 チャレンジャーの星稜がつかみとった全国切符。チャレンジャーにふさわしく、チームのためにがむしゃらに戦えるファイターが決勝ゴールを奪ったのは必然だったのかもしれない。

写真:村田亘