「スポーツライター平野貴也の『千字一景』」第57回:個性の連係(名経大高蔵高:牛尾颯太、竣太)

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名経大高蔵高のMF牛尾颯太(右)とFW牛尾竣太
“ホットな”「サッカー人」をクローズアップ。写真1枚と1000字のストーリーで紹介するコラム、「千字一景」

 打つべきか、打たざるべきか。双子の兄弟は、胸の内に異なる思いを秘めていた。

 平成29年度全国高校総合体育大会(通称:インターハイ)のサッカー競技大会に初出場した名経大高蔵高(愛知)は、ボールの回りに複数の選手が密集してコンビネーションを多用する攻撃が特徴的だった。

 全国大会の雰囲気に慣れた20分過ぎから持ち味を発揮。左FWの牛尾竣太らがドリブルやパスでスイッチしながら、じわじわと攻め込んだ。決定的なチャンスは、2回。18分に主将の牛尾颯太が放ったミドルシュートが惜しかった。28分に訪れたのは絶好機だった。3バックの左に入った平井遥登がパスを出しそうで出さないドリブルでスルスルと相手を抜き去って、GKと1対1になったが、右足ですくい上げるように放ったループシュートは、枠を外れた。

 結果論になるが、この時間帯にもっとシュートを打ってゴールを奪いたかった。しかし、ボールを持ってたくさん仕掛け、最後まで崩したいという思いもチームにはある。双子の牛尾兄弟は、意見の食い違いを見せた。弟の竣太は「打たないチームで有名なので」と笑ったが、兄の颯太は「打てば、もっと楽だと思うんですけどね。僕は、見ていて、打ちたかったんです。だから(ミドルを)打ちました。打ったら入りそうじゃんと思った。でも、前のみんなは打たないから……。はよう(早く)打て、と思っていました」と少し口を尖らせた。隣にいた竣太は「恐縮です」と気にもかけていなかった。

 ひとくちに「つなぐサッカー」と言ってしまえば、それまでだが、2人の個性がプレーに出ていたように機械的ではなく、見ていて面白かった。しかし、後半早々に失点を喫し、退場者が出たことで反撃ムードを断たれた。彼らは、磨いて来たサッカーが通用する喜びと、大舞台で見てもらえる楽しさを感じた一方で、勝ち上がるための課題も突き付けられた。

 弟の竣太は「ドリブルが少しずれたらすぐに体を寄せて来る強さとかは感じた。でも、股抜きとか1対1のちょっとした駆け引きも全国大会で通用するんだなと思った」と話し、兄の颯太は「冬もまた全国に出て、もっといろいろな人に見てもらえて、もっと勝てるように成長したいと思いました」と大会を振り返った。

 夢に近付くほど、課題は増えていく。今後は、県大会でもマークされる。双子の牛尾兄弟を擁する名経大高蔵は、冬の大舞台でも観衆を沸かすことができるだろうか。楽しみだ。

■執筆者紹介:
平野貴也
「1979年生まれ。東京都出身。専修大卒業後、スポーツナビで編集記者。当初は1か月のアルバイト契約だったが、最終的には社員となり計6年半居座った。2008年に独立し、フリーライターとして育成年代のサッカーを中心に取材。ゲキサカでは、2012年から全国自衛隊サッカーのレポートも始めた。「熱い試合」以外は興味なし」

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スポーツライター平野貴也の『千字一景』-by-平野貴也

[adidas Cup仙台]埼玉の“次なるブレイク候補”狭山ヶ丘が準決勝を5-0突破!

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狭山ヶ丘高は5-0で快勝。決勝進出を決めた
[8.7 adidas Cup仙台準決勝 狭山ヶ丘高 5-0 鎌倉高 松島フットボールセンター]

 埼玉の“次なるブレイク候補”がタイトルに王手――。adidas Cup 2017仙台大会準決勝が7日午後に行われ、狭山ヶ丘高(埼玉)が伝統校の鎌倉高(神奈川)に5-0で快勝。狭山ヶ丘は8日午前の決勝で開志学園JSC高(新潟)と戦う。

 ストロングポイントを持った選手たちが組み合わさった、スケール感大きな好チームがadidas Cup仙台で強さを発揮している。埼玉県西部の入間市に位置している狭山ヶ丘は昨年のインターハイ予選でベスト4に入り、今年の関東大会でも武南高などを破ってベスト4進出。「スピード感あるサッカーを目指している」と西澤正仁監督が説明するチームはこの試合、堅い守りから強力アタッカー陣の個を活かしたスピード感あるサッカーで相手を飲み込んだ。

 前線で技術力の高さを示していた10番FW近藤克樹主将(3年)やさり気ないキック一本で局面を変えていたMF山脇謙臣(3年)、またともにスピードのある右の山本渉、左の長尾晃介(ともに3年)の両翼などがチャンスを作り出す狭山ヶ丘は前半17分、山脇が左CKからGKを外したボールを中央へ蹴り込むと、これをFW新井優士(3年)が頭で合わせて先制点。さらに20分には、相手のバックパスをインターセプトした山本がGKとの1対1を制して2点目のゴールを奪った。

 準々決勝を5-1で制して勝ち上がってきた鎌倉は序盤、前線への縦パスを2列目の選手たちが上手くフォローする形で前進していたが、ミス絡みで痛恨の2失点。それでもこの試合の印象的なプレーヤーの一人だったFW高原直朗(3年)がキープ力、突破力を発揮するなどチームを牽引する。
 
 25分には速攻からMF小澤和記(2年)が持ち上がると、右サイドを斜めに切れ込んだ高原がMF佐藤亮太(3年)へラストパス。27分にも高原が抜け目ない動きでDFと入れ替わり、決定的なシュートを打ち込んだ。

 だが、注目GK青木祐太を中心にCB伊東雄大やCB辛島拓哉(全て3年)らが堅い守りを見せる狭山ヶ丘から得点を奪うことができない。後半立ち上がりにその鎌倉を狭山ヶ丘が連続ゴールで突き放した。

 4分、左中間で獲得したFKを近藤が右足で鮮やかに決めて3-0。さらに6分には近藤の落としを受けた山本がPAで倒されてPKを獲得し、これを伊東が豪快に決めて4点差とした。狭山ヶ丘は20分にも交代出場のDF南歩武(3年)のパスから一気に抜け出した近藤がGKをかわして5点目のゴール。鎌倉は佐藤の左クロスや高原のインターセプトからのシュートなどで1点を目指したが、無得点に終わった。

 昨年度のインターハイで初出場ながら3位へ躍進した昌平高や、2度目の出場だった昨年度の選手権で8強入りした正智深谷高など新興勢力の台頭が目立つ埼玉県。狭山ヶ丘も埼玉の壁を突き破るだけのポテンシャルを秘めたチームだ。

 西澤監督は選手権へ向けて体づくり、精神力と武器の強化をテーマに掲げながら現在は「雑さを取り除くことを意識している」という。多少アバウトな攻撃でもゴールまで持ち込めるほどの力がを持つが、攻守においてより細かい部分を突き詰めること。GK青木は「この合宿でみんなが細かいミスを指摘し合って、あのミスどうだったかとか、何がダメだったかとか、当事者以外の選手は何ができたかとか徹底してできてきた」と語っていたが、1プレー1プレーをより大事にすることで、これまで見られた決めきれずに流れを失って失点、そして敗戦という試合が減ってきているという。

 勢いのあるチームは付け入る隙をなくして、より勝つチームへ。山脇が「まずは(埼玉県予選の)1回戦勝って、どんどんチームとして、全員で勝ち上がっていきたい。選手権取って全国行きたいです」と語ったように、選手権出場がチームの大目標だ。今回のadidas Cup仙台ではファイナルも勝ち切って選手権への弾みをつける。

(取材・文 吉田太郎)

「東京五輪への推薦状」第46回:精鋭相手に見せた別格の輝き。「覚醒してきた」尚志の1年生FW染野唯月

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尚志高の新1年生FW染野唯月は京都橘高戦で2得点の活躍
 2020年東京五輪まであと3年。東京五輪男子サッカー競技への出場資格を持つ1997年生まれ以降の「東京五輪世代」において、代表未招集の注目選手たちをピックアップ

 ちょうど1週間前の試合では、残り10分から交代で出てきたものの、ほぼノーインパクトに近かった。だが、1週間を経て地元の郡山市を舞台に行われた「第6回福島復旧・復興祈念ユースサッカー大会」で、尚志高の新1年生FW染野唯月は別格の輝きを見せ、全国級の精鋭を向こうに回して確かな存在感を見せ続けた。

 5日の三重高戦で0-2でビハインドの状況から投入されて2点を奪うと、6日午前の大津高戦では交代出場でダイナミックな抜け出しからの好クロスでアシストを記録。そして同日午後の京都橘高との一戦ではFWとして先発出場。ゴール前で危険なプレーを継続して2得点を奪い、紛れもないMOM級の活躍で勝利に貢献してみせた。

 鹿島アントラーズつくばジュニアユース時代は「元々ボランチ。たまにトップ下もやった」(染野)という選手だったが、尚志のスタッフは最初からストライカーとして獲得を目指していたと言う。前線の柱となれる資質があるという判断だった。

 茨城県龍ケ崎市にいた染野が遠く福島の尚志を選んだのは「自分のプレーに合ったサッカーをしている」ことに加え、鹿島つくばJYの二歳先輩にあたり、幼少期から知っているという現尚志10番・加野赳瑠の存在も大きかったようだ。加野は「ずっと仲が良くて、『こっち来いよ』と自分が誘いました」と笑いつつ、「アイコンタクトだけで分かり合える」という絶妙なコンビネーションを早くも見せ付けているのは印象的だった。

 仲村監督は「言われたことをすぐにピッチ上で反映できる。今日も中盤に下りて来すぎていることを指摘して我慢して待つように言ったら、パッとそれに対応して点も取った」という吸収力を評価しつつ、最近のプレーぶりについても「覚醒してきた」という言葉で前向きに表現する。チームとしての積年の課題である決定力不足解消にも「プリンスリーグ東北でも結構点を取れていますからね」と期待をにじませた。

「前線でヘディングに競り勝ったり、いろいろなパターンのシュートを持っているのが武器」と語る男が、いま前線の選手としてこだわっているのは裏への抜け出しとそこでのファーストタッチ。C大阪のFW柿谷曜一朗のプレーを参考にしながら、プレーを磨いてさらに得点パターンを増やしていきたい考えだ。

 視線の先には二つの目標を見据えている。一つは長年の夢であるプロ選手になること。もう一つは「年代別日本代表に入りたい」という純粋な野心だ。まだまだFWとしてのキャリアも浅く、未完成の選手には違いない。だが、点を取るという感覚は紛れもなく天性のもの。郡山での日々がこのルーキーをどう育んでいくのか。2年後が楽しみになった。

執筆者紹介:川端暁彦
 サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』元編集長。2004年の『エル・ゴラッソ』創刊以前から育成年代を中心とした取材活動を行ってきた。現在はフリーランスの編集者兼ライターとして活動し、各種媒体に寄稿。著書『Jの新人』(東邦出版)。

[MOM2182]旭川実MF坂部開人(3年)_インハイ登録外の悔しさ胸にアピールの大会で2発

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旭川実高MF坂部開人は2ゴールの活躍
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[8.6福島復旧・復興祈念ユース大会 帝京安積高 2-2 旭川実高 西部サッカー場メイン]

 全国ベスト8へ勝ち進むチームメートたちの姿を見ながら、誇りに思うと同時に、悔しい思いも感じていたという。「見てて悔しい気持ちがあった。みんな上手くなっているし、勝てているし、自分がここに入ったらどういうことができるかなと考えていた」。

 旭川実高は、「2017 第6回 福島復旧・復興祈念ユースサッカー大会」の帝京安積高戦でインターハイ登録外だったMF坂部開人(3年)が2ゴール。「インターハイに出られなくて悔しいのがあったので、結果残してアピールしっかりしたい」という大会でアピールに成功した。

 前半は得意のドリブルを十分に発揮することができていなかったが、後半は持ち味を発揮。0-2の後半25分にはDFを切り返しでかわし、右足でゴールを奪うと、31分にはMF遠藤正志のクロスを上手く合わせて2点目を奪った。

 チャンスを活かすことができなかった旭川実の中で3年生ドリブラーが残した一つの結果。指揮を執った斎藤達弘コーチは強力なサイド攻撃陣を活性化する新たな起爆剤として「頑張って欲しい」と坂部に期待していた。

 あまり意識しすぎず、自然体で仕掛けたりする際に結果が出ているという坂部。「ドリブルで1人でも2、3枚かわして味方のスペースを作っていきたい」と意気込む。夏の悔しさを胸に、課題の守備面などを改善し、武器をさらに磨いて、選手権ではチーム目標の全国ベスト4にピッチで貢献する。

(取材・文 吉田太郎)

「福島復旧・復興祈念ユース大会」旭川実はインハイ8強にも満足感無し。帝京安積戦はドローもサブ組が意欲持ってアピール

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インハイ8強の旭川実高はFW佐々木悠真らがポジション奪取へアピール
[8.6 福島復旧・復興祈念ユース大会 帝京安積高 2-2 旭川実高 西部サッカー場メイン]

 6日、強豪校・Jアカデミーがハイレベルな戦いの中でチーム強化を目指す「2017 第6回 福島復旧・復興祈念ユースサッカー大会」で、ホストチームの一つである帝京安積高(福島)とインターハイベスト8の旭川実高(北海道)が対戦。帝京安積がMF矢吹柊真(2年)とFW五条方猛(3年)のゴールによって2点を先取したが旭川実はMF坂部開人(3年)の2ゴールによって2-2の引き分けに持ち込んだ。

 帝京安積の小田晃監督が「震災直後は福島に人が来てくれなかった。その中でサッカーを通して福島は大丈夫だと発信して、また強化の場にしたい」と尚志高の仲村浩二監督や地元の企業、全国のサッカー仲間などと協力してスタートした「福島復旧・復興祈念ユースサッカー大会」も6年目。今回の参加校では今夏のインターハイで京都橘高と旭川実がベスト8に入り、この大会を経験した後にプロ入りしたり、年代別日本代表入りする選手が出たりするなど夏の福島での戦いが強化に繋がっている。

 この日はインターハイ福島県予選4強の地元・帝京安積が旭川実に挑戦。けが人を除くメンバーで今大会に参戦している旭川実は、インターハイ優秀選手のMF中里颯汰(3年)らは出場せず、インターハイでサブや登録外だった選手たちが先発した。それでも帝京安積は五条方が「見たり、実際に戦って、その経験を自分たちのものにして全国に繋げたい」と語ったように、試合開始から強豪相手にチャレンジする。

 6分、右MF矢吹が中央へ切れ込んで左足一閃。弾丸ミドルがゴールを破り、先制点を奪う。旭川実は前線のFW佐々木悠真(3年)を起点にサイドからの仕掛けやボランチの選手の飛び出しなどで反撃。だが、決定的なチャンスをつくるものの、クロスバーを叩いたり、GK小松楓芽(3年)の好守に阻まれるなど追いつくことができない。

 逆にMF篠木涼太(3年)らが絡んで前線へパスを繋ぎ、五条方が鋭いターンから前進してチャンスメークするなど攻め返していた帝京安積は34分、穂積が左サイドのスペースを突くと、クロスを五条方がねじ込んで2-0と突き放した。

 後半、互いにミスが増える展開となったが、インターハイで躍進するチームを北海道で悔しい思いも抱きながら応援していた旭川実の選手たちが意地を見せる。MF鈴木周人(3年)のスピードを活かした抜け出しなどで反撃する旭川実は25分、切り返しでDFをかわした坂部が右足で追撃ゴール。相手の守備を跳ね返すパワーが失われてきた帝京安積に対し、静岡学園高とのインターハイ3回戦で決勝点を決めているMF金野修那(2年)の右足ミドルなどで攻める旭川実は31分、MF遠藤正志(2年)のクロスを坂部が合わせて同点に追いついた。

 この後のチャンスを活かせず、試合は引き分け。旭川実のサブ組の選手たちは結果を残すことができなかったものの、指揮を執った斎藤達弘コーチは「出た子以上にやらなきゃというモチベーションが出ている」とインターハイの登録メンバー外だった選手たちの勢いを口にしていた。そして「ここから、また勝負」(斎藤コーチ)。インターハイで活躍したかどうかに関係なく、選手たちは一からの競争をしてチームを高めていく。

 インターハイでは同校にとって初の8強入りを果たしたが、チームに満足感は全くなかった。中里は「自分たちの目標にしていた4に行けなかった。あまりベスト8に入ったとか関係ないと思う。北海道でも1位を取れていないので、あのままでは全国出れないので、チームとして、個人としてレベルアップして選手権に臨みたいです。今回(予選などで)勝てたチームでもどんどん力が上がってくると思うので、追いつかれないようにしていかないといけない」。むしろ、4強に入ることのできなかった悔しさを滲ませ、選手権への決意を口にしていた。

 昨年は10月末には地元・旭川に雪が降り始めるなど、難しい環境の中での挑戦となるが、選手たちは悔しさもエネルギーに成長を遂げ、選手権で目標の全国4強入りを達成する。

(取材・文 吉田太郎)

「スポーツライター平野貴也の『千字一景』」第56回:ボスの帰還(流経大柏:本田裕一郎監督)

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優勝の瞬間、ガッツポーズする流通経済大柏高・本田裕一郎監督
“ホットな”「サッカー人」をクローズアップ。写真1枚と1000字のストーリーで紹介するコラム、「千字一景」

 試合終了の笛が鳴った瞬間、選手のガッツポーズを撮ろうと思っていたが、自然とレンズをベンチに向けていた。両腕に力を込めた70歳の指揮官が、笑みをたたえていた。日本一に留まらない喜びが、溢れていた。

 準決勝を勝った後、流通経済大柏高の本田裕一郎監督は「去年の今頃は、病院のベッドの上だったからね」と言った。流経大柏は、前回大会も全国高校総体(インターハイ)の決勝に進んだが、本田監督の姿はなかった。大病を患って入院。ドクターストップがかかっていた。教え子たちが勝ち進むのは嬉しい報告に違いなかったが、自分のいる場所が不満だった。

 残念に思っていたのは、本人ばかりではない。前回大会、決勝で宿敵の市立船橋高に敗れた際、大会を通して監督代行を務めた榎本雅大コーチは「オレにはまだ(日本一は)早かったよ。来年は、うちの大将を連れて来てリベンジするから!」と宣言していた。

 監督がいなくても勝ちたかったが、一緒に喜びたい気持ちの方が大きかったのだろう。少し笑っているように見えた。1年後、有言実行のときがやって来た。日大藤沢高とのひりつく様な接戦となったファイナルを、流経大柏は制した。9年ぶり2度目、単独では初となる優勝だ。

 表彰後、バックスタンドの前で本田監督が胴上げされた。3度宙に舞った指揮官は、満足げだった。選手たちは、ほかのスタッフも胴上げをしようとしたが、榎本コーチは「オレは、いいよ。あれ、上げられるまでが痛いんだよ」とうそぶいて遠ざかっていた。親のような存在だという本田監督の胴上げを嬉しそうに見上げていたのが印象的だった。

 本田監督は、優しさも厳しさも持っていて、愉快な一面もある。監督が姿を消すと、選手たちが愚痴をこぼすこともある。それでも、試合に勝てば選手が飛び付いていく。試合終盤の左コーナーキックでは、本田監督がヘディングで決めろとジェスチャーで指示を送り、チームの全員が表情を凍らせて試合の時間を伝えた。監督は「キープだ、キープ!」と言い直した。

 年を重ねても、大病を患っても、指導熱は衰えない。榎本コーチは「(病気で)本当に大変な思いをしたと思う。こんなにサッカーに情熱をかけている人は、いないよ」と笑った。本田監督が戻って、チームが日本一に輝いた。優勝が決まった後、バックスタンドからは凱歌が上がった。

「流経が勝てたのは、我らの力じゃなく、流経が勝てたのは、ボスのおかげだから」

■執筆者紹介:
平野貴也
「1979年生まれ。東京都出身。専修大卒業後、スポーツナビで編集記者。当初は1か月のアルバイト契約だったが、最終的には社員となり計6年半居座った。2008年に独立し、フリーライターとして育成年代のサッカーを中心に取材。ゲキサカでは、2012年から全国自衛隊サッカーのレポートも始めた。「熱い試合」以外は興味なし」

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スポーツライター平野貴也の『千字一景』-by-平野貴也

「福島復旧・復興祈念ユース大会」強豪対決の中で一際光った京都橘DF河合。咄嗟の判断変更からスーパーゴールも

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前半5分、京都橘高の左SB河合航希主将が左足で先制ゴール
[8.5福島復旧・復興祈念ユース大会 尚志高 3-2 京都橘高 尚志高G]

 全国各地の強豪校、Jアカデミーにとって夏の鍛錬の場となっている「2017 第6回 福島復旧・復興祈念ユースサッカー大会」。この日、特に目を引くプレーを見せていたのが京都橘高の左SB河合航希主将(3年)だ。

 最終ラインから声で発信し続ける一方、判断の良さと技術力の高さを活かしたプレーで決定的な仕事もしてのけた。前半5分、味方との連係によってフリーでポジションを取った河合は大方のクロスという予想を反して左足シュート。これがGKの逆を突く形でニアサイドへ突き刺さり、先制点となった。

「最初はクロスしようと思っていたんですけど、GKがクロスの対応の位置にいたので一回狙ってみようかなと思って狙ったら自分でもびっくりするくらい良いシュートを打つことができました」

 ボールをトラップする瞬間に間接視野でGKの位置を確認。そしてすぐに判断を切り替える柔軟性と、見事に狙ったニアサイドへシュートを蹴り込む技術力の高さも発揮された一撃だった。

 先制ゴールの5分後にもハーフウェーライン付近から前目のポジションを取っていたGKの位置を見逃さず、超ロングシュート。また、後方からボールを繋ぐチームの中で再三ボランチのような位置取りでボールに絡み、攻撃を組み立て、決定的なパスを配球するなど存在感ある70分間だった。

 米澤一成監督は今年、たとえ結果が出なくてもブレずに後方から攻撃を組み立てる攻撃を貫く考えだったことを明かした。そのチームの中で河合はMF梅津凌岳(3年)とともに欠かせない存在。ボランチ、そしてSBでも周囲を活かすプレーを見せている。

 京都橘は日本一を本気で狙うチーム。インターハイでは8強入りし、全国上位のレベルの力があることを証明したが、選手、コーチングスタッフにはこのままではいけないという思いがある。だからこそ、河合は「得点は決めているんですけど、失点は多すぎるなというところが僕は気になっています。インターハイでベスト8になれたんですけど、そこであんまり満足はしていない。全国で1位を狙えるチームだと思っているので夏でパワーアップして全国で互角以上の力をつけていきたい」と力を込めた。

 将来、「プロになりたい」と言い切る河合自身、今後の1試合1試合でアピールを続けて、4年後になっても必ず夢を叶える。

(取材・文 吉田太郎)

日ノ本学園、2年ぶり全国制覇に笑顔と涙が止まらない…歓喜の優勝セレモニー(20枚)

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歓喜の胴上げをされる主将・MF牛島理子(3年)
[8.4 総体女子決勝 藤枝順心高 0-1 日ノ本学園高 ユアスタ]

 平成29年度全国高校総体「はばたけ世界へ 南東北総体2017」女子サッカー競技(宮城)決勝が4日午前に行われ、2連覇を狙う藤枝順心高(静岡)と2年ぶりの優勝を目指す日ノ本学園高(兵庫)が激突。日ノ本学園が1-0で勝ち、5回目の優勝を果たした。

(写真協力=高校サッカー年鑑)

●【特設】高校総体2017

昨季無冠の悔しさ晴らす日ノ本学園、2年ぶり全国制覇! 総体最多優勝の名門が雪辱を果たす(20枚)

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念願の優勝に、笑顔と涙がともにこぼれる
[8.4 総体女子決勝 藤枝順心高 0-1 日ノ本学園高 ユアスタ]

 平成29年度全国高校総体「はばたけ世界へ 南東北総体2017」女子サッカー競技(宮城)決勝が4日午前に行われ、2連覇を狙う藤枝順心高(静岡)と2年ぶりの優勝を目指す日ノ本学園高(兵庫)が激突。日ノ本学園が1-0で勝ち、5回目の優勝を果たした。

(写真協力=高校サッカー年鑑)

●【特設】高校総体2017

MF澁川鈴菜が日ノ本学園を優勝に導く!「信じて走れ」の言葉守り、勝ち得た決勝ヘッド(12枚)

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決勝弾を決めたMF澁川鈴菜(2年)
[8.4 総体女子決勝 藤枝順心高 0-1 日ノ本学園高 ユアスタ]

 平成29年度全国高校総体「はばたけ世界へ 南東北総体2017」女子サッカー競技(宮城)決勝が4日午前に行われ、2連覇を狙う藤枝順心高(静岡)と2年ぶりの優勝を目指す日ノ本学園高(兵庫)が激突。日ノ本学園が1-0で勝ち、5回目の優勝を果たした。

(写真協力=高校サッカー年鑑)

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