[新人戦]宿敵・京都橘を延長撃破!東山が6年ぶりV!!:京都

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京都制覇を果たした東山高イレブン
[2.24 京都府高校新人大会決勝 京都橘高 1-2 東山高 西京極陸上]

 平成29年度京都府高校サッカー新人大会の決勝が24日に行われ、京都橘高東山高が対戦した。延長後半10分にMF森田勇真(2年)が決勝点を決め、東山が2-1で勝利。6年ぶり2回目となる新人戦タイトルを掴んだ。

 両校がトーナメントの決勝戦で対戦するのは、2012年度の選手権予選以来。これまで東山は、「優勝するための挑戦権すら掴めていなかった」と福重良一監督が振り返るように、準々決勝や準決勝で京都橘に敗れ、全国行きの切符を逃がし続けてきた。

「意識するなと言うのもおかしいし、難しい」と福重監督が口にするように、これまでは京都橘を意識し過ぎて持ち味を発揮できない試合が続いたが、この日は「ここまで来たら、気持ちが大事。入学してから初めての決勝だったけど、萎縮せずに楽しむ気持ちで試合に挑んだ」(MF倉貫直人、2年)と序盤から、冷静な試合運びを披露した。

 東山は、MF湊麟太郎(1年)らがサイドからチャンスを伺う相手をカウンターで押し返しつつ、倉貫とMF片岡宥人(2年)らが2列目でセカンドボールを拾って、試合を優勢に進める。最初にチャンスが訪れたのは、前半17分。中盤から強引に仕掛けたFW久乗聖亜(2年)がPA左手前で倒され、FKを獲得。FW長坂大陸(2年)が直接狙ったキックがゴール右隅に決まり、東山が先制した。

 追いかける展開となった京都橘は、「後ろの選手が、相手のプレッシャーから逃げていた」(篠原弘樹コーチ)ために、ボランチにボールが入らず見せ場を作ることができず。それでも、1点を失ってからは状態が改善し、後半15分には、右サイド起点とした連係から、FW山田剛綺(2年)が決定機を迎えたが、シュートは枠を捉えられなかった。

 以降も、「どん欲に泥臭い得点でも良かったのに、獲り切る所で獲り切れなかった」(MF篠永雄大、2年)が、29分に相手PAでDF松田佳大(2年)が倒されてPKを獲得。これを篠永が冷静に決め、試合は延長戦へと持ち込まれた。

 延長戦に入ってからは互角の展開が続いたが、動きが落ちた京都橘を尻目に、東山は「相手よりも練習で走ってきたと思うので、走力には自信があった」と倉貫が胸を張るように、足を止めない。ベンチも選手を後押しするため、交代カードを切ると延長後半10分、中央でボールを受けた長坂が相手DFの背後にパスを配球。走り込んだ途中出場の森田がドリブルでGKとの1対1に持ち込み、ゴール右隅に決めると、直後にタイムアップを迎えた。

 因縁の相手を下しての京都制覇とあり、選手の喜びもひとしおだ。左サイドで鋭い突破を見せたMF宇賀神拓世(2年)は、「今まで泣いてきてばかりだった。ホンマに悔しくて、今年こそは歴史塗り替えようと皆で言ってきた結果が出たので嬉しい」と笑顔を見せた。

 次なるターゲットは、MF鎌田大地(フランクフルト)が高校1年だった2012年のインターハイ以来、遠ざかっている全国大会の出場。倉貫は「やっと僕らの代で歴史を変えることができた。決勝の舞台も経験できたし、橘相手でもやられることが分かったのは収穫だと思う。ただ、新人戦なので満足せずインターハイ、選手権に繋げたい」と意気込みを口にした。

(取材・文 森田将義)

Jキャンプも経験した市立船橋の注目GK田中悠也、“物言う”、勝たせる守護神へ

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市立船橋高の注目GK田中悠也はチームに厳しさを求めて、勝つ守護神へ
[2.23 練習試合 U-16日本代表候補 2-1 市立船橋高]

 市立船橋高は前半からボールを支配し、U-16日本代表候補を攻守で圧倒。MF松尾勇佑(2年)や後半開始から出場したU-17日本代表MF畑大雅(1年)が抜群の突破力を示していたほか、コンビネーションで相手の守りを切り崩すシーンや、ショートカウンターから決定的なシュートを撃つシーンが幾度もあった。

 だが、得点は前半にFW賀澤陽友(1年)が挙げた1点のみ。後半6分にU-16日本代表候補FW中野桂太に同点FKを許すと、23分にも守備が緩くなった隙を突かれて中野にミドルシュートを決められてしまった。

 終盤の猛攻も相手の身体を張った守りに阻まれたほか、シュート精度を欠いた部分も多分にあって同点に追いつくことができなかった。昨シーズンの終盤戦から先輩GK長谷川凌(現水戸)に代わってゴールを守る機会を得てきた注目GK田中悠也(2年)は同点ゴールについて「バウンドするボールに対して自分のアプローチの仕方とかが全然できていなかった。もう一個前で触っていれば、弾けていた」と自身の責任を口にするなど、悔しさを滲ませていた。

 朝岡隆蔵監督が「男気がある」と評する田中は今季、チームの副主将を務める。「自分が選ばれた理由として、周りが言えないことをしっかり自分が言えるところがあるので」という田中は、年代別日本代表経験者らタレントたちの名が並ぶ一方で我の強い選手も多いチームに厳しさを加えるつもりでいる。

 今冬、Jクラブのキャンプ参加も経験した田中は注目GKでもある。身長184cm、80kg、胸板の厚さ、がっちりとした体つきは高校生離れしたもの。アスリート能力高さを活かしたセービングなども必見だ。

 キャンプではJリーガー相手にも特長を発揮。「キックも上手くいきましたし、自分結構身体能力がある方なので一瞬のタイミングで寄せたり、1対1で身体に当てたり、シュートを外させることができました」と振り返る。一方で、感じたのは目標とするプロと自分との差。クロスボールの判断、ポジショニング、守備範囲……目標とする世界に入るため、市立船橋にタイトルをもたらすGKになるためには改善しなければならないことがまだまだある。

 4月に開幕するプレミアリーグの目標はチャンピオンシップ制覇。「去年から経験させてもらっているメンバーが多い分、経験則があるのでスタートダッシュをきかせてぶっちぎりでチャンピオンシップに出られるようにならないといけない。そのためには自分の守備とかシュートストップを上げないと勝ち点を失ってしまう」。この日は後半のみの出場で2失点。もちろん納得はしていない。勝利、勝ち点を引き寄せる守備ができるチーム、GKになる。

(取材・文 吉田太郎)

「元気」を持って競争、成長中の流経大柏、1年生も存在感示してU-16代表候補に4発快勝

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バネのある動きで存在感を示した流通経済大柏高の1年生MF大西悠介(中央)
[2.23 練習試合 U-16日本代表候補 1-4 流通経済大柏高]

 選手権準優勝の流通経済大柏高は23日にU-16日本代表候補と練習試合で対戦。前半をA2メンバー、後半を選手権で先発も経験したMF熊澤和希(2年)やCB西尾颯大(2年)ら現時点の主力組で臨んで4-1で快勝した。

 立ち上がりから持ち前のハイプレスでU-16代表候補のパスワークを遮断。前半を2-1で折り返すと、後半も高い位置でのインターセプトから、ロングスローも交えた迫力のある攻撃でゴールへ迫った。

 そして、CKから右SB佐藤輝(2年)、サイド攻撃からFW木村聖(1年)がそれぞれゴール。この日は、新チームの柱となるべき選手の熊澤や、本田裕一郎監督がボランチの先発候補に挙げる1年生MF大西悠介や1年生MF羽坂豪も存在感ある動きを見せていた。

 下級生も上級生に負けないようなアピール。膝を手術したために長期離脱中のCB関川郁万主将(2年)や187cmCB麻生雄貴、GK猪瀬康介(2年)といった中軸候補を怪我で欠いている中で誰がポジション争いで抜け出してくるのか、注目だ。

 本田監督が現在求めているのは「元気」。この日は選手同士が声を絶やさず、互いに掛け合っているシーンが目立った。それでも指揮官は「いつもより声が出ていたけれども、ダメ」。選手権日本一にあと一歩で届かなかった名門は、新シーズン開幕へ向けて各選手が激しいポジションを繰り広げる中、声で雰囲気と連係面も向上させ続ける。

(取材・文 吉田太郎)

[新人戦]夏冬全国に出場して得たものを土台に。東海大熊本星翔は昨年以上の成績目指す

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後半24分、東海大熊本星翔高FW森本瑠が同点ゴール
[2.19 九州高校新人大会準々決勝 東海大熊本星翔高 1-1(PK3-4)日章学園高 宮崎県総合運動公園球技場]

 熊本県2位で九州高校新人大会に出場した東海大熊本星翔高は予選リーグ第2節で選手権8強の長崎総合科学大附高(長崎1)に3-1で快勝。続く佐賀東高(佐賀2)との予選リーグ最終節では試合終了3分前にFW阿久根勇輝が決勝点を決めて、2勝1敗で決勝トーナメント進出を果たした。

 日章学園高(宮崎1)との準々決勝は後半4分に失点。だが、東海大熊本星翔は、吉岡宏樹監督が「今大会成長したと思う」と評したGK金子福太郎(2年)が好セーブを連発して追加点を許さない。そして、いずれも今年のチームの中心人物である注目MF吉岡涼斗主将(2年)とMF末永幹(2年)のダブルボランチを起点にサイドへボールを集め、FW森本瑠(2年)の力強い突破や阿久根の抜け出しも交えて同点ゴールを目指す。

 そして後半24分、左SB國岡秀隆(2年)がMF渡邉秀斗(2年)とのパス交換からエンドライン際まで切れ込んでクロス。これを森本が頭で合わせて同点に追いついた。だが、1-1で突入したPK戦では、3人目と5人目が失敗して3-4で敗戦。初の準決勝進出を逃した。

 東海大熊本星翔は昨年、インターハイに40年ぶりとなる出場を果たし、全国1勝。選手権も初出場を果たした。だが、インターハイは2回戦で市立船橋高(千葉)に後半突き放されて敗れ、選手権は富山一高(富山)に0-1で競り負けた。名門校を苦しめたものの、勝つまでには至らず。新チームは勝敗を分けた差を埋めるために、球際や競り合い、ボールの拾い合いをトレーニングからこだわってきた。

 3年生が残してくれた全国での経験。吉岡監督が「(その経験を糧に)新しいチームを作り上げていかないといけない」というように、選手たちは全国の経験を土台にしてより積み上げていく構えだ。そして、九州大会優勝の大津高をはじめ、強豪ひしめく熊本を突破して再び全国へ。この日、ボランチから相手ゴールへ迫る怖さを見せていた吉岡やパスセンス光る末永ら全国を知る選手たちを中心に、昨年を越える成績を残す。

(取材・文 吉田太郎)

[新人戦]雨中でファイトし、大津苦しめた大分工。九州大会4戦5発のエース矢野中心に全国復帰目指す

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九州大会で5得点を記録した大分工高FW矢野達也主将
[2.19 九州高校新人大会準々決勝 大分工高 1-3 大津高 宮崎県総合運動公園球技場]

 今年の九州高校新人大会で周囲を驚かせるような戦いを見せたチームだ。大分県第2代表として出場した古豪・大分工高は、沖縄県第1代表・那覇西高との予選リーグ初戦をエースFW矢野達也主将(2年)のハットトリックの活躍によって3-0で快勝。続く宮崎県1位の日章学園高戦は後半残り4分からの連続失点によって逆転負けを喫したものの、創成館高(長崎2)との予選リーグ最終節を1-1で引き分けて、ブロック2位で目標の決勝トーナメント進出を果たした。

 友成義朗監督が「去年から前の一枚と両SH、ボランチも出ている。ある程度、点は取れると思っていた」という通りに攻撃力を発揮し、毎試合得点を重ねて混戦ブロックを突破した。そして優勝校・大津高(熊本1)との準々決勝では、雨中で各選手がファイト。相手のパスワークに対して、出足良く距離を詰め、前に強いCB島津悠揮(2年)やMF友成司(2年)らが身体を張ってボールを奪うなど大津に思うような攻撃をさせなかった。

 0-0で迎えた前半24分には矢野の左FKをニアサイドへ飛び込んだFW高野康巳(1年)が頭で合わせて先制点。大津に攻め込まれ、危ないシーンも作られていたが、常に守勢だった訳ではない。アグレッシブな守備でボールを奪うと、MF明石龍弥(1年)らがDF間にポジションを取りながら丁寧に繋ぐパスや、スピードのある右SH塩田ヒロト(2年)と左SH後藤滉稀(2年)の両翼の仕掛け、矢野のポストワークや精度高い右足キックなどから攻め返していた。

 集中した戦いを見せていた大分工は後半20分まで1-0でリード。だが、大津が後半9分に投入した187cmFW大﨑舜(2年)や182cmCB吉村仁志(2年)の高さに屈し、セットプレーで3点を奪われて逆転負けに終わった。今大会は6失点全てが後半に喫したもの。「ガチャガチャしたところで足が出ない」(友成監督)という部分や相手のパワーある攻撃への対応など、課題が失点に繋がった。

 それでも、強豪相手の4試合で学んだことは多い。明石は「大津は失点しても気持ちの部分でずっと集中していて最後まで全員でやれていたけれども、自分たちは最初のセットプレーでやられた時から気持ちの部分でちょっと下がってしまった。(個人的には)トップに入った時に動き出しがまだまだ遅くて、トップの選手が孤立したりしていた。守備の部分で球際の強さだったり、トラップの置き所がまだまだ低いので、もうちょっと上げていきたい」と九州トップレベルの相手から学んだ部分を改善することを誓っていた。

 また、九州大会で計5得点を挙げて知名度を上げた矢野は「全試合得点もできましたし、攻撃に関しては結構九州でも通用する部分があったんじゃないかと思います」と語った一方、「こういう試合(敗れた大津戦)で勝ち切るためには自分は10番、キャプテンを任されているので試合を決定づけられるようなゴール、追加点を獲れないといけないと思います」。競った試合でより得点できるFWを目指していく。

 インターハイに12度、選手権も11度の全国大会出場を果たしている大分工だが、インターハイは87年度、選手権も92年度を最後に出場することができていない。それでも、この九州大会で力を示した選手たちが今年、新たな歴史を刻むチャンスは十分にありそう。矢野が「みんなファイトできる仲間たちですし、気持ちも弱くない」というイレブンが今年、大分を突破する。

(取材・文 吉田太郎)

『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』: 一歩ずつ。一歩ずつ。(FC町田ゼルビアユース)

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東京都クラブユースU-17サッカー選手権大会で西が丘のピッチに立ったFC町田ゼルビアユース
東京のユースサッカーの魅力、注目ポイントや国内外サッカーのトピックなどを紹介するコラム、「SEVENDAYS FOOTBALLDAY」

 監督の竹中穣はきっぱりと言い切った。「僕個人の感情だけで言えば『ジャンプアップはねえな』って。やっぱり一歩一歩、一つひとつ積み上げるしかない作業なんだなって、6年やらせてもらって、改めて毎年感じます」。一歩ずつ。一歩ずつ。FC町田ゼルビアユースが丁寧に踏みしめてきた道は今、そこへ続こうとする者たちを彼らがイメージしてきた方向に導きつつある。

 2014年1月。新チームの“新人戦”に当たる東京都クラブユースU-17サッカー選手権大会で、決勝リーグまで勝ち上がったゼルビアユースは、FC東京U-18と好ゲームを演じる。アグレッシブな姿勢を打ち出し、前半にカウンターから先制点を奪取。最後は意地を見せた相手に、後半44分に失点を許して1-2と逆転負けを喫したものの、当時の立ち位置を考えれば、大善戦と言っていいような内容と結果だった。

 そんな印象を持って指揮官の竹中に話を聞くと、想像とは全く違う感想が次々に口を衝く。「僕らがゴールまで速く進むというのは、実際に顔を上げてプレーできていない証拠。ボールが動く距離とか、人が準備をしておくことは非常に怠けてしまっていたので、ああいう形になったのかなと思います」「スコアだけが収穫かなと。内容は散々というか、どっちかというとネガティブな捉え方しかしていないですね」。正直に言って面食らったのと同時に、結果に左右されない竹中の視点と明瞭な口調を強く記憶している。

 それから4年。彼らを取り巻く環境は着実に変化してきた。2014年には都内で上から5番目に属していたリーグ戦のカテゴリーも、一つずつピラミッドを駆け上がり、今シーズンは上から2番目のT2リーグへ参戦。加えて、2015年に夏のクラブユース選手権で初めて全国を経験すると、再び関東予選を勝ち抜いた昨年の同大会ではグループステージを突破し、全国ベスト16まで躍進した。

 迎えた今シーズンの“新人戦”。目標は竹中監督就任以降、まだ達成していない決勝リーグ突破。すなわち、3位決定戦と決勝の舞台となる西が丘で戦うこと。キャプテンを託された鈴木舜平も「グループを見た時に『西が丘に行けるな』と思いましたし、ゼルビアはもう決勝でやらなきゃいけないチームになってきていると思います」と力強い決意を口にする。
 
 1月21日。初戦の相手はFCトリプレッタユース。今年は同じT2リーグを戦う、実力伯仲のライバルだ。開始からインテンシティの高いバトルが繰り広げられ、1年生フォワードの前田陸斗は「今日みたいなバチバチした試合は好きなので、やっていてニヤニヤが止まらないくらい楽しかったですね」と笑顔を見せる。前半41分にPKを獲得したのは、同級生の橋村龍ジョセフのトップ帯同を受け、「最高学年のフォワードはもう自分しかいなくて、責任もあります」と話す齊藤滉。それを佐藤陸がきっちりと沈め、1点のリードを奪う。
 
 そのまま1-0で突入した試合終盤。ゼルビアユースはコーナーキックを手にすると、追加点を狙うより、コーナー付近で時間を潰す方を選択した。このことについて、竹中はこういう見解を示す。「去年は『勝利を追求する』というテーマで、それを継続することと、今年は『プロ意識を持って取り組む』というテーマを掲げている中で、彼らなりのジャッジがああいう表現だったのかなと、僕は非常に前向きに捉えています」。そのコーナーキックをショートで始めた野呂光希もこう口にする。「絶対に勝っておきたい試合で、勝てば少しでもこの後を有利に進められる所もあるので、『西が丘に必ず行きたい』というみんなの気持ちだったと思います」。そのまま“ウノゼロ”で勝ち切った彼らは貴重な勝利をもぎ取った。

『プロ意識を持って取り組む』という今年のテーマに関しては、前述した橋村の存在が一つのメルクマールになっている。「橋村が今年トップでやりますけど、それがスタンダードで、トップに登録されることではなくて、試合に出て、周りの方たちに評価していただけるかどうかだと。サッカーの世界でプレーヤーとして、人として評価を得るような立場になれるかどうかに基準値を持っているのは事実で、今年のコンセプトは“プロ意識”ですけど、『君の同級生にもプロの登録選手がいますよ』と。『いいんですか? もうこの時点で遅れてますよ』という投げ掛けはしています」と竹中。聞けばこの翌日から4人の選手がトップの練習に参加し、そのパフォーマンス次第ではキャンプにも招集されるとのこと。その中の一人に選ばれた前田は、「単純にサッカー選手として負けたくないので、ユースの選手というよりは一人のサッカー選手としてバチバチ勝負しに行きたいなと思っています」という言葉を残して、グラウンドを後にしていった。

 2月3日。2連勝を飾り、既に“西が丘”への切符を手に入れていたゼルビアユースは、決勝進出を懸けて、東京ヴェルディユースと対峙する。前田、佐藤、小山田賢信の3人はトップのキャンプ参加で不在。ただ、「彼らがいないのは、ここにいる子にとって凄くチャンスですし、自分の存在意義や立場を確立できるチャンスでもありますから」と指揮官。決勝への切符獲得に加え、さらなる意味合いを選手たちは投げ掛けられ、ゲームはスタートする。

 前半は「全然ボールも動かなくて、相手のペースに飲まれました」と鈴木舜平が話した通り、持ち味を出せずに先制点を献上した上、後半開始早々にはリードを2点に広げられる。ところが、追い込まれてからようやく彼らに火が付いた。「あんまりヘディングで決めることはないので、自分でもちょっとビックリしました」と笑った齊藤が完璧なヘディングで追撃の狼煙を上げると、後半42分にはフリーキックのチャンスから、鈴木舜平がここもヘディングを叩き込み、スコアを振り出しに引き戻す。「キャプテンなので悔しさは早く捨てて、チームの力によりなれるようにと思っていました」と語る鈴木舜平は、トップに練習参加した4人の中で唯一キャンプへ招集されず、この試合に臨んでいた。引き分けでもファイナルへと勝ち上がれる状況の中で、いろいろな想いを抱えたキャプテンが劇的な同点弾をマークする。シナリオは、完璧に整っていたはずだった。だが、後半アディショナルタイムに勝ち越しゴールを奪われたゼルビアユースは、あと一歩の所で決勝進出を逃してしまう。

 印象的だったのは試合終了直後。サポーターに挨拶を終えたばかりの選手とスタッフはベンチに帰らず、そのままピッチ中央でミーティングを始めた。「『悔しい』ということはまず共有しないといけないし、『何か足りないからこうなるんだよね』ということの“何か”をすぐ感じる必要はあって、試合に出ていた子だけに限らず、ここにユースの選手としていたことで、きっと感じたり成長したりすることがあると思うので、全員で共有する必要があったから、ピッチですぐ話しました」と明かした指揮官は、こう続けた。「そんな勝負は簡単ではないので、追い付いた所までは彼らが何か着実なモノを得ていると思いますけど、やっぱり“最善”は存在する訳ですし、ましてや勝っていない訳で、『これをきちっと持ち帰ろうね』ということは共有しています」。3人を欠いた90分間で、彼らの“最善”へ届かなかったゼルビアユースは、3位決定戦を戦うことになる。

 2月11日。西が丘。FC東京U-18に3点をリードされて帰ってきたハーフタイム。竹中の怒声がロッカールームへ響く。「負けたら自分たちより悔しがっているんじゃないかというぐらい、勝負にこだわる監督」(佐藤)の檄が効いたのか、後半はリズムを取り戻し、鈴木舜平のゴールで1点を返したものの、試合終盤にPKで加点され、終わってみれば1-4の完敗。「たぶん相手のユニフォームでビビっていたというのはありますね」と鈴木舜平が話せば、「まだ名前負けの部分はあると思います」と佐藤。最低限の目標は達成したものの、小さくない課題を手にする格好で、彼らの“新人戦”は幕を閉じた。

 クラブがアカデミーを重視する姿勢は、様々な施策からも窺える。昨年の夏にはアカデミースタッフの酒井良氏が1年間の研修を行っていたセルビアのFKヴォイヴォディナ・ノヴィサドというクラブに、前田と佐藤が短期留学を敢行した。「言葉も全然通じないから、最初の2日とか、俺もコミュニケーション取ろうとしているのに“ガン無視”されたんですけど、3日目に試合があって、スピードでガッと持っていったら『えっ?』『ブラボー!』みたいになって、そこから声を掛けられるようになって。結局世界はサッカーが基準なので、そこで認めてもらえるかどうかは、本当に面白かったですね」と当時を振り返るのは前田。2週間とはいえ、彼らが海外で得てきた経験は何物にも代え難い。

 ただ、同様にJクラブアカデミーの特権とも言える、トップチームとの連携の部分で、ユースの3選手のキャンプ参加を受け入れた相馬直樹監督は、「彼らを評価するのは竹中やアカデミーダイレクターで、僕の仕事ではないので、凄く頑張ってくれていたと思っています」と前置きしながら、こうも口にしている。「ただ、実際は遠慮して終わってしまった部分もあると感じています。変な話、『自分が同じ立場で行ったら、凄くギラギラしてるのにな』って。彼らが本当にプロになりたいとか、何か今と違う景色に飛び込んでいきたいというのであれば、そういうことが必要かなと思います。だから、僕が評価するというよりも、彼らにちゃんと振り返って欲しいなと。それが彼らの今後の一日一日になっていくと思うので」。

 それでも、第1次政権を含めればゼルビアでの指揮も6シーズン目を迎える相馬が、誰よりもアカデミーの成長に期待している一人であることは言うまでもない。「やっぱり僕は監督なので、出身地で選手を選ぶ訳でもないし、外国籍枠もあるし、いろいろな枠の中でやらなきゃいけないですけど……でも、町田の子が増えてくれたら嬉しいですよね。できればウチでプレーしてくれる選手に、そういう選手が増えてくれれば嬉しいと思っています」。ゼルビアに関わる人たちがゼルビアの話題を口にする時、本当に楽しそうに、生き生きと話す印象は常日頃感じていた。その筆頭が相馬だということも、また間違いのない所である。

 “西が丘”の試合後。竹中に話を聞く。「前半見ていただいた通りで、サッカーにならなかったです。ケツを叩いたからなのか、ほっといてもアレぐらいのことをしてくれたのか、まではわからないですけど、別のものが後半はあったと思うので、『毎週毎週僕がハーフタイムにケツを叩くんですか? プレーしているのは誰ですか?』という話をしましたけど」。想像通り、吐き出す言葉にはかなりの怒気が含まれていた。

 前述したように、竹中が監督に就任してからゼルビアユースの立場は大きく変わっている。T2リーグ参戦。全国ベスト16進出。一見“順調”に見える結果を残していく中で、周囲から見られるその変化と、竹中自身が感じる変化にはギャップがあるように、会話を積み重ねていく中で以前から感じていた。思ったそのままをぶつけると、「それは面白い話ですね」と少し笑った竹中の言葉は連なっていく。

「順調なんてこれっぽっちも思ったことはないですし、ましてや感じてもないですし、本当に足りない所だらけで、それは彼らに求める以上に僕自身がという所が付いて回ると思っています。やっぱり子供たちはごまかせないので、預かっている選手と僕の中での競争というか、僕がやっていることの一つひとつも上げていかないと、去年より成長はないと。僕がFC東京に凄くリスペクトがあるのは、あれだけの選手たちを抱えながら、きちんと結果を出し続けるということで、本当に僕らから見たらビッグクラブたる立ち振る舞いをしてくれてると思うので、やっぱりそこと僕らは対等にできるようになりたいし、僕らも横綱になりたい。だから、本当にFC東京とがっちり組んで、それでも『スキルが足りなかった』『僕のもたらす戦術が低かった』ということを感じたいし、いつもピッチの中で選手も気にしてもらいたいし、僕らが彼らに預ける瞬間も当然たくさんあるので、その中で『ああ、折れないでいいものが出たな』という、そういう所を『チームの共存と競争』と言っていますけど、自分も選手とそういう間柄でいたいなと思いますからね」。

 冒頭の言葉はヴェルディ戦の後に聞いたものだ。『ジャンプアップはねえな』というフレーズに、一際力が籠っていたことを思い出す。“慣性の法則”は、「外力が働かなければ、物体は静止または等速運動を永遠に続ける」というものである。これはある意味で組織の在り方をよく現していると思う。“慣性”と同義語が“惰性”だと聞けばわかりやすいだろうか。一歩ずつ。一歩ずつ。竹中の与える“外力”を得て、その歩みを前に進めてきたゼルビアユース。彼らがここからさらなるステップアップを遂げるためには、竹中と同じか、それを上回る“内力”が、きっと選手たちにも求められている。

■執筆者紹介:
土屋雅史
「(株)ジェイ・スポーツに勤務。群馬県立高崎高3年時にはインターハイで全国ベスト8に入り、大会優秀選手に選出。著書に「メッシはマラドーナを超えられるか」(亘崇詞氏との共著・中公新書ラクレ)。」


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SEVENDAYS FOOTBALLDAY by 土屋雅史

筑波大に新加入する才能たち。クラセン・プレミアMVP小林幹、前育の柱・CB角田、井川、池谷、山原

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FC東京U-18のエース、U-18日本代表MF小林幹は筑波大へ
 17年の天皇杯全日本選手権で快進撃を見せた筑波大が18年の入部予定選手を発表した。(協力=関東大学サッカー連盟、筑波大)
 
 高校年代の各大会で活躍した逸材たちが名門の一員となる。FC東京U-18(東京)を日本クラブユース選手権、プレミアリーグチャンピオンシップ優勝へ導き、両大会でMVPに選出されたU-18日本代表MF小林幹と、前橋育英高(群馬)の守備の柱として全国高校選手権優勝の立て役者となった日本高校選抜CB角田涼太朗は特に注目の存在だ。

 また、北海道コンサドーレ札幌に2種登録されていたU-17日本代表のボランチ、MF井川空(北海道コンサドーレ札幌U-18)や川崎フロンターレU-18(神奈川)のチームリーダー、中盤の柱として奮闘したMF池谷祐輔、そしてJFAアカデミー福島U18(静岡)の10番を背負ったMF山原怜音という注目の才能たちも筑波大に進学する。

以下、筑波大の入部予定選手
▼DF
角田涼太朗(前橋育英高)
▼MF
井川空(北海道コンサドーレ札幌U-18)
池谷祐輔(川崎フロンターレU-18)
小林幹(FC東京U-18)
山原怜音(JFAアカデミー福島U18)

※関東大学サッカー連盟の協力により、同オフィシャルサイト(http://www.jufa-kanto.jp/)で発表されたリストを随時掲載致します。なお、大学によっては一般入学等によって新入部員が増える可能性があります。また諸事情により、公表されない大学もあります。

[新人戦]終盤3発の静岡学園が静岡3連覇!

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 平成29年度静岡県高校新人大会サッカー競技県大会は静岡学園高が、3年連続15回目の優勝を果たした。

 決勝で常葉大橘高と対戦した静岡学園は、0-0の後半30分にMF鈴木翔太が左足で先制ゴール。さらにMF三枝竜也と10番FW塩浜遼のゴールで加点した静岡学園が3-0で勝利した。

【決勝】
静岡学園高 3-0 常葉大橘高

【準決勝】
静岡学園高 5-0 清水東高
常葉大橘高 2-0 藤枝東高

【準々決勝】
静岡学園高 2-0 浜松開誠館高
清水東高 2-0 東海大静岡翔洋高
富士市立高 1-3 常葉大橘高
浜名高 0-0(PK4-5)藤枝東高

[新人戦]選手権4強の矢板中央が4発V!交代出場MF板橋が2G1A!:栃木

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 平成29年度栃木県高校サッカー新人大会は17日に決勝戦を行い、選手権全国4強の矢板中央高宇都宮白楊高に4-0で快勝。2年ぶり9回目の優勝を果たした。

 矢板中央は前半25分、交代出場のMF板橋幸大のアシストからFW望月謙が先制ゴール。後半8分にはDF白井陽貴がPKを決めて2-0と突き放した。その後も攻める矢板中央はいずれもFW大塚尋斗のアシストから板橋が2ゴール。矢板中央がまず栃木1冠を獲得した。

【決勝】
矢板中央高 4-0 宇都宮白楊高

【準決勝】
矢板中央高 2-0 文星芸大附高
宇都宮白楊高 2-1 佐野日大高

【準々決勝】
矢板中央高 4-1 大田原高
文星芸大附高 2-1 小山南高
小山高 1-2 宇都宮白楊高
宇都宮高 0-1 佐野日大高